サマービューティ便り

劇団Nadianneの主宰・役者の北島夏美のブログです。 お芝居のこと、日常のことを書いています。 劇団HPにもぜひ遊びにいらして下さい。

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ナショナルシアターライブ『夏の夜の夢』

7月16日、最終日に、ナショナルシアターライブの『夏の夜の夢』観てきました!

20時40分開始で23時52分終了というのに、ビビッて行くのを迷っていたんですが、
おかめちゃんやちかちゃんがツイッターで感想をつぶやいていて、
やっぱり行きたいな…と行ってきました。


この、状況になってから映画館に行ったのは初めて。
今の映画館の、前後左右を開けて、というのは、見るほうには気楽でいいですね~
(映画館の売り上げ的には…ですが…)

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後半、さすがに長いなって思ったけどね(笑)。
感想書いてみます!

 

■あんなに笑えると思わなかった

コメディなわけですけど、ほら…戯曲読んでもそんなに笑えるわけじゃないじゃないですか(暴言)。
でも、ほんっとに、笑えた!映画館の見ている人たちもみんな声を出して笑ってた。
やっぱりシェイクスピアは上演してこそ…!
英語で日本語字幕だったのですが、たまに聞き取れる韻やお遊びなセリフがとっても面白かったです!
作品の面白さを今更知るなんてね…(大汗)

 

■妖精のイメージ

『夏の夜の夢』と言えば
パック、といういたずら好きな妖精が出てくる、という印象ありますよね?
パックって言ったら私は北島マヤガラスの仮面)か龍真咲(宝塚)かって、いうイメージしかなかったので…↓

左:北島マヤ 右:龍真咲

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パックがこんなパンクなお兄さんで出てくるとは思わなかったんですよね。

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※公式YouTubeより
右肩に♡に矢が刺さっているタトゥーまで入っている「ぽさ」!
でも出てきたとたん分かったんですよね「パックだ!」って。
誰もが彼に注目したくなる、とってもチャーミングなパックでした!
客席とのキャッチボールも上手くて、身体能力(空中芸をする)も完璧!
パックが客席を通る時に「ロンドンの奴らが…」とかアドリブを言うんですよね。
それだけでも面白いんですよ。でも、そうしたらお客さんの一人が「アイルランドから来たよ!」と客席から言うんですよ(笑)
観客も粋でいいなあ~
他の妖精さんたちもめちゃめちゃキュート!もの凄い筋肉と体幹から繰り出される空中芸に見とれてしまいました。

 

 ■ティターニア様魅力的すぎ
妖精の女王・ティターニア(アマゾンの女王との二役)役の女優さんがとーっても素敵で!!
とにかく迫力があるんです。女王らしい振る舞い、けれど森の妖精の女王なのでどこか人非ざるものの雰囲気、そしてキュートさ。
自分の思い通りに夫・オーベロンがまんまと騙されたことを知って大喜びの図がかわいすぎる!(笑)

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ドレスから覗く美しい足にも見とれてしまう。
そして、とにかく大きい(パックより圧倒的に大きいし、かなり身長がありそうなオーベロンより大きい?)!
調べてみたところ、なんと191センチ!かっこいい~!
グェンドリン・クリスティーさんという、『ゲームオブスローン』などで活躍されている女優さんだそうです。

 

■観客と作る舞台

舞台は、客席が舞台を囲む形で作られていました。

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観客は「森」という設定らしいのですが、この観客と一緒に作る感の楽しさがとても良かったです。
出演者たちが客席を書き分けて歩いたりするし、
劇をする職人たちが客席からスマホを借りてスマホを見てクスクスしたり勝手にセルフィをしたりとやりたい放題(笑)
そして最後は全員で輪になってダンス。お祭りみたいなハッピーな終わり方。
めちゃくちゃ密な客席を見てちょっとぐっと来てしまいました。


■演出のすばらしさ

そして何より、演出の妙です。
ありそうでなかった「オーベロンとティターニアのセリフ逆でいけるんじゃない?」。
これ最高だった、最高だったんですよ……

昔と今の倫理観の違いはあるし、好みの問題なのですが、私は「変な人を笑う」脚本が好きじゃないんです…「普通の人のちょっと変わった行動を笑う」「普通の会話のはずがちょっとずれが生じて笑う」方が好きというか…
その意味で「夏の夜の夢」は惚れ薬でロバ男を好きになるように騙される女、の設定はあまり笑えなかったんですよね…
でもそれを男女逆転させて、かつ、両方の男性共に「まんざらではない」感じを出すことによって、無理強いしていない感、惚れ薬のせいだったけど、楽しいひと時だったよね、という余韻を残している所が、嫌な感じがしなかったのかもしれません。
オーベロンとニック・ボトムが泡風呂に入ってシャンパンを飲んで楽しそうに出てくるんですが(そう、こんなシーンあるの(笑))客席も「ヒュ~!」みたいに盛り上がってました。ハッピー感にあふれている!

キャストは色々な人種の方が混ざっていて(というように見えた)
なんとなくイギリスで上演されるシェイクスピア劇=白人のもの、みたいな、意識していなかったけど潜在的に自分が思い込んでいたことを認識させられました。

色々な自分の固定概念を覆された意味でも、本当に観て良かったなと思いました。

ナショナルシアターライブを見たのは2度目。
もちろん、生で観劇できるのが一番ですけれど、イギリスで上演されている珠玉の舞台を映画館で観られるなんて、幸せなことだなあ…と帰路につきました。